中国電気自動車のシェア増加が止まらない。エジプトの首都カイロでは、自動車の数が年々増えている。渋滞が激しくなる交通網でトヨタ自動車や日産自動車、ドイツ、フォルクスワーゲンと世界の主要な自動車メーカーが走っている。その中でもBYDなどの中国勢がシェアを握りつつある。
エジプトの首都カイロではトヨタや日産が現地で組み立て生産を行い、日本メーカーがシェアを独占していた。そのシェアに中国勢が迫ろうとしている。
日本貿易機構(ジェトロ)の調査によると、新車販売台数のトップは依然日本車だ。2位は中国が追随している構造は2021年から23年までに変化はない。だが、中国メーカーの新車販売台数は、21年は1万台、22年は5000台、23年は2000台とその差を縮小している。
中でも奇瑞汽車は現地メーカーと提携しており、エジプトで自動車を生産し、生産台数を伸ばしてきた。BYDもエジプトに組み立て工場があり、タクシー向けなどで販売数を伸ばしている。
配車サービス「ウーバー」で運転手を務める男性は「中国製は日本車や欧州車に比べてコストパフォーマンスが高い」と明かした。
アフリカ全体を中国自動車メーカーが牽引しているかというとそうではない。エジプトでの販売台数増加は局地的な現状だ。アフリカの中で最も大きな自動車市場である南アフリカやケニアでは、中国勢は勢いを伸ばせていない。
その要因は。アフリカの自動車市場にある。新型コロナウイルスの感染拡大以降、アフリカ経済はインフレと金利上昇を受け、停滞している。消費者の購買力低下などを受け、自動車のサプライチェーンの混乱が直撃した。供給不足によって新車の販売価額が上がり、大衆層には手が届きにくい商品となっている。
都市部では自動車の数が増えるエジプトも全体でも見れば自動車販売数は右肩下がりだ。21年に5000万台だった新車販売台数は現在6万9000台にまで落ち込んでいる。
また新車価額の上昇に伴い、中古車市場の価格も上昇している。アフリカでは中古車も含めて資産という考え方が強い。自国通貨への不安から自動車への需要が高まり、価額の上昇に悩まされている。従来は70万円で中古車を購入できたエジプトだが、現在同じ価格で自動車を入手することはできなくなっている。
アフリカ各国にとって自国内で自動車生産を実現することは希望だ。国内経済における自動車生産の影響力は大きく、素材や部品、物流といった経済の複雑性で企業誘致と雇用の増加を実現できる考えがある。そのため、アフリカ各国は中古車の輸出に制限をかけて、国内での新車生産に税制優遇などを用意することで海外から自動車メーカーの誘致を進めている。
足元での自動車販売が伸び悩んでいることを受け、設備投資などを行う自動車メーカーは決定を先延ばしにしている。海外からの新規参入を行う自動車メーカーが減ったことから、現在生産をしている自動車メーカーや新車を輸入している企業のシェアが拡大している。
南アフリカの新車市場では、現在も「ロックダウン方式」で自動車を生産しているトヨタがトップを維持している。日本車では3位にスズキ、小型車のスウィフトと軽自動車のジムニーの販売が好調だ。
二輪市場も追随者が
自動車と異なる状況を展開しているのが二輪市場だ。インドや中国のメーカーの販売が急拡大している。市場シェアの過半を占める状態となった。宅配サービスと出前の需要を受け、小型輸送業が好調だ。特に「ウーバー」を使用した配達員などの購入が増加傾向にある。コストパフォーマンスが高いインドや中国の二輪車が売れている。
二輪車と同じように自動車市場でも中国とインドの企業が市場を握る可能性がある。アフリカ市場でコストパフォーマンスの良い中国車やインド車の販売が拡大する可能性がある。
この数年間、アフリカの自動車市場は伸び悩んでいるが、アフリカは中国と同等の人口を抱える巨大な市場だ。一時的な停滞を考慮しても、今後の市場拡大については疑いがない。そんなアフリカ市場でシェア拡大のチャンスを模索しているのが中国企業だ。中国電気自動車最大手のBYDは23年に南アフリカで電自動車の主力多目的スーパーカーを発売した。他のEVの車種も発売する予定で、アフリカでのEV車としてのブランドを構築しようとしている。口コミが強いアフリカ市場で先行者が得られるメリットは大きう、日本勢もこのチャンスを逃すことはできない。