過去2年のほとんどの期間、パラジウムは市場から忘れ去られた金属だった。トレーダーに無視され、アナリストに見捨てられ、金、銀、ウランを巡る熱狂に隠れてしまったのである。2022年に3,000ドルを超える水準から大幅に崩壊して以来、パラジウムが意義のある回復を遂げると考えた者はほとんどいなかった。市場心理は極めて暗かったため、長期投資家でさえパラジウム市場を過去のものとして処理し始めていた。
しかし市場は、確信が最も薄い時に反転する癖がある。表面の下では静かな変化が進行している。価格は安定し、資金の流れはポジティブに転じ、かつて崩壊していたテクニカル構造は再構築されている。苦しい調整として始まった動きは、徐々により建設的なものへと変化している。すなわち長期的なトレンド反転の初期段階である。
この分析では、パラジウムが次の大きな周期的上昇の瀬戸際にある可能性を探ってみたい。テクニカルシグナルやエリオット波動の整合性、資金流入データや先物ポジションなどの証拠を総合すると、市場が分配段階から蓄積段階に移行していることは明らかである。市場環境は単に改善しつつあるというわけではない。パラジウムの長期的な強気相場サイクルにおける最後のインパルスである波動5の始まりに似てきているのである。
詳しく見ていこう。
パラジウムの復活:忘れられた金属が再び脚光を浴びる
パラジウムは前回のコモディティサイクルのスターだった。2016年の安値付近から2022年2月の3,000ドル超の高値まで、パラジウム価格は500%以上急騰した。排出基準の厳格化、自動車需要の活発化、供給不足の長期化が相まって生まれた上昇である。しかしすべてのパラボリック相場と同様に、パラジウムの上昇も始まったばかりの時と同じくらい素早く終わりを迎えた。パンデミック後の経済が冷え込むと自動車メーカーはパラジウムの代替資源であるより安価な代用品へのシフトを始めた。需要は急激に落ち込み、価格は70%以上も下落し、数年分の利益がわずか数四半期で吹き飛んでしまった。
一見すると、この崩壊はパラジウムの物語の終わり、すなわち行き過ぎた相場の必然的な後味のように見えた。しかし実際には長期的なリセットの始まりだったのだ。過去2年間、市場は静かに恐怖心に駆られた清算から、安定した忍耐強い蓄積へと移行した。価格は850~1,290ドルの間で下げ止まり、売り圧力が徐々に弱まり買いの関心がゆっくりと戻ってくることを示す丸みを帯びた底のチャートパターンを描いた。この種の底値は一夜にして形成されるものではない。時間の経過とともに、弱気のポジションが消え、長期投資家が参入して形成されていくものなのである。

2023年半ば以降、すべての上昇試みに上限を設けていた1,290ドルのネックラインを突破した時に市場心理は実際に変わった。2年間、市場がこの上限に向けて押し上げられるたびに失敗し、パラジウムは忘れ去られた方向感のない市場に閉じ込められたままであるという見方を強めた。しかし価格が確信を持って上限を突破したことで、その物語は変わったのである。ブレイクアウトは単なるテクニカルイベントにとどまらなかった。市場心理の転換点でもあったのだ。2022年以降トレンドを形成してきた売り手がついにその支配力を失い、買い手が再び姿を現し始めたことを示したのである。
丸みを帯びた底は非常に力強い。なぜならそれはまさに上述の転換を反映しているからである。すなわち悲観主義が徐々に弱まり、信頼が徐々に再構築されつつあるのである。そして市場が集団で最悪の状況がすでに過ぎ去ったことを認識し、新たな相場段階が始まったことを表している。抵抗線が崩れると市場心理は改善し、資本が戻り、勢いがつく。パラジウムにとってその初期兆候はすでに動き出しており、パラジウムがついに足場を固めたこと、そしてそれに伴い次の主要な上昇トレンドの基盤が整ったことを示唆している。
パラジウムのチャート上のゴールデンクロスは、新たな強気相場の始まりを示唆
チャートパターンは変化の兆しを示唆しているが、移動平均線はその変化が実際のものかどうかを確認する役割を果たしている。週足チャートでパラジウムはその確認を示した。26週単純移動平均線(SMA)が104週SMAを上抜けてゴールデンクロスを形成したのである。ゴールデンクロスは長期的な下落トレンドが反転したことを示す最も信頼できるシグナルの1つである。

ゴールデンクロスはめったに発生しない。発生した場合、短期的な反発よりも大きな意味を持つことが多い。たいていの場合、勢いが変わったこと、そして市場の根本的な方向性が変わったことを示すシグナルである。パラジウムで最後にゴールデンクロスが現れたのは2016年半ばのことである。直近の歴史における最強のコモディティリレーの1つである、6年にわたる強気相場が始まったのである。2016年半ばのパラジウム価格は500ドル以下で、2022年初頭までに3,000ドル超まで上昇した。
早送りして今日に至るまでの状況は、驚くほど似通っている。長く苦しい調整を経て、2本の重要な移動平均線がついに収束し、交差した。価格は主要な抵抗線を突破した。歴史的に、ゴールデンクロスと同時に長期的なブレイクアウトが起こったという事実は、主要な周期的な上昇の初期段階において頻繁に見られている。これは単に方向転換を示唆しているだけでなく、根本的な強さの再生を示唆している。
もちろん、どのシグナルも過去の事象の繰り返しを保証しているわけではない。しかし今回のシグナルはあらゆる意味でぴったり一致している。今回のクロスオーバーは、パラジウムが安定化しただけでなく、長期的な勢いをプラスに転じさせるほど急上昇していることを示している。リスクとリターンのバランスも強気派に大きく傾いた。パラジウムの弱気相場の終焉を本当に証明してほしいと願う投資家にとって、このシグナルは過去2年間ずっと欠けていた緑の光なのである。
パラジウムの17年におよぶエリオット波動パターンは、新たな強気相場を示唆
一歩引いてより大きな絵を見てみると、過去17年間におけるパラジウムの価格推移はほぼ教科書通りのエリオット波動インパルスシーケンスを形成している。エリオット波動は、市場が楽観、調整、再生という周期を繰り返すことでどのように動くのかを説明するためのフレームワークである。パターンは2008年の金融危機の余波で始まり、それ以来驚くほどの対称性をもって展開されてきた。概要は以下の通りである。

・波動1(2008〜2011年): 世界的な金融危機の後、市場が信頼を再構築し、初期の買い手を惹きつけ始めた回復段階。
・波動2(2011〜2016年): 投資家の忍耐力を試す、引き締まった期待を再設定する長期的な調整。強気の上昇に向けて道を開いた。
・波動3(2016〜2022年): 供給の締め付けと自動車業界の需要の高まりにより、パラジウム価格が3,000ドルに達した爆発的な強気相場。
・波動4(2022〜2024年): 以前に説明した2年にわたる丸みを帯びた底を形成した深い調整段階。市場が過剰な投機筋を振り落とし、心理をリセットすることを可能にした。
・波動5(2025年以降): 次の最後のインパルス波。通常は市場を新たな高値へと導くか、少なくとも前回のピークを再テストする。
先日2年の抵抗線を突破し、ゴールデンクロスが長期の勢いの決定的な変化を確認したことで、波動5が始まる舞台は整ったように見える。歴史的に、この段階は力強く感情的に充たされていることが多い。調整の間に市場から離れていた投資家が市場へ戻ってきて楽観主義が生まれ、勢いがつくにつれて信頼が広まるのである。
とは言うものの、波動5の上昇は波動3の上昇とは性質が異なっている。波動3は主に、強い需要、供給の引き締め、参加者の増加などのファンダメンタルズによって推進された。一方で波動5は、感情やポジショニング、新たな上昇トレンドが始まっているという心理的認識によって推進されることが多い。言い換えれば、パラジウムは長期的な強気相場サイクルの最終段階に入った可能性がある。かつては死んだも同然の資産に投資家が再び信頼を取り戻す心理がうかがえる段階なのである。
パラジウムの次の上昇に向けたロードマップ
それでは波動5はどこまで上昇するだろうか。将来の価格を予測することは決して正確な科学ではないが、テクニカル分析は最もあり得るシナリオをアウトライン化するのに役立つ。パラジウムの場合、3つの異なるアプローチが同じ結論に達している。すなわち、強気の価格帯は2,000~3,000ドルの間であるということだ。
最初で最も簡単な方法は、波動1の高さを測り、その距離を波動4の底値から上方へと投影する方法である。このアプローチ