2008年の金融危機やそれ以前の景気後退を18年間にわたる不動産周期理論を用いて正確に予測したことで知られるエコノミストのフレッド・ハリソンは、収束する危機が混沌をもたらすだろうと述べている。
81歳のベテランであり、ソ連崩壊後のロシアの経済政策立案に10年間携わったハリソンは、今回の状況を「一生のうちで経験したことがない」ものと見ている。
「世界大戦が起きた場合のみ例外で、これは何百年も続いているパターンの話である」と彼は最近のYouTube インタビューで語った。
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遅れている必然
今回のパンデミックは、もともと2025~26年にピークを迎えるはずだった住宅価格の急上昇をもたらすことにより、ハリソンは今回のパンデミックが不動産周期におけるこのサイクルを混乱させたと考えている。これらの利益はロックダウンによって「蓄えられ」、今日の世界をサイクルの終わりに押しやったのだ。
ハリソンによると、現在各国政府は住宅市場にインフレを起こし、労働者に税金を課し、貸付リスクの規制緩和を行っているが、これらの行動は崩壊の到来を早めるだけである。
「我々は今後12~18か月の間に住宅価格の終焉をもたらすピーク行動にロックされている」と彼は警告した。引き金となる出来事は不動産分野から来るとは限らない。「もしかすると、AI企業への投資から期待していた利回りが得られないという事態が起きるかもしれない。すると一気に全てが止まってしまう」
彼は、今回の影響は2008年よりも「はるかに悪い」ものになると主張している。当時は銀行が「大きすぎて潰せず」、紙幣を印刷することで救済できた。今は違う。今や「大きすぎて潰せないのは各国政府だが、債務を抱えていても誰一人として救済しない」のである。
今回の状況の唯一無二な点は、複数の危機が同時に起きていることだ。環境への圧力、移民の流れ、地政学的紛争、そして政治の麻痺である。「もし4つの存在に関わる脅威が同時に起き、しかもそれが世界規模で起きた場合、全く隠れる場所などない」とハリソンは警告した。
壊れた経営者階級
ハリソンの批判は市場にとどまらない。問題の規模に立ち向かうことができない経営者階級、政治家、学者、シンクタンクに深刻な制度的弱点を見ているのだ。
「彼らが語る全ては、立法を行う階級における政治的麻痺を意味している。彼らは国民のために新しい未来やより良い未来を築く方法がまったく分かっていない。彼らのことを公平に評価すれば、彼らに助言している学者やシンクタンクも同様に分かっていないのだが」
この制度的失敗は、各国政府が真の解決策を提示できないまま統治を維持しようとする中で弾圧の増加につながっていると彼は主張した。「想像力の欠如によって、もはや出来事の支配権を握るために国民をさらに弾圧する以外に手立てはない」だろうと彼は述べている。
ハリソンは革命よりも情報に基づく大衆運動を支持している。
「我々はフランス革命の再来など望んでいない。各地の広場にギロチンを設置して皆の首を刎ねて回ろう。そんなことをしても何の進展もない」
代わりに彼は、市民に制度的解決策を理解させ、基本的な財政改革のために民主的圧力をかけることを呼びかけている。
存在に関わる脅威としてのAI
おそらく最も不吉なことに、ハリソンは人工知能をこれまでにない存在に関わるリスクであると特定した。「人工知能は全く人工的なものではない。それは自律型知能なのだ」とハリソンは警告した。 「我々が現在行っていることは、人類における既存の行動や既存の思考方法をこれらのアルゴリズムに注ぎ込んでいるに過ぎない」
ハリソンによると、AIの危険性は、人類の破壊的パターンを吸収したことに加え、道徳的制約を欠いている点にある。
「メタバースに注ぎ込まれたこの知能は、投資家が作り出せる限りの速度で、自律的になるだろう」と彼は予測している。 「それは最終的に地球上で利用可能なエネルギーを捕らえることになる。そしてそれが人間を取り除けば取り除くほど、このメタバースを維持するためのエネルギーが増大する」
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