もし起きた時に全ての銀行口座や個人メッセージ、政府の機密ファイルが突然丸見えになってしまうような世界を想像してみよう。その世界では数十億の秘密を安全に保っていた暗号が一夜にして打ち砕かれることになったのだ。
Q-Dayとはその差し迫ったシナリオに与えられた名称であり、量子コンピューターが今日のデジタル世界を守っている暗号の壁を破ってしまうほど強力になる日を指している。
その結果は、プライバシーや安全性、そして世界中のテクノロジーに対する社会の信頼にまで及ぶ広範な影響を及ぼすであろう。
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Q-Dayはなぜ重要か?
今日、ほとんどのオンライン通信、金融取引、軍事機密、医療データはRSAやECCのような暗号化方式に依存しているが、これらの暗号を解読するのに通常のコンピューターでは数千年かかるとされている。
しかし、量子アルゴリズムは理論的には、これらの暗号化方式の基盤となる数学的問題をはるかに速く解くことができるため、今日のサイバーセキュリティプロトコルは無意味になってしまう。
Q-Dayが発生した場合、量子コンピューターを所有している敵対勢力は、これまで保護されてきた機密情報を解読できるようになるため、私的な会話から国家機密に至るまで全てを漏洩させてしまう可能性がある。
この日は「量子の黙示録」や「Y2Q(Y2Kの量子版)」とも呼ばれている。
Q-Dayはいつ起こる?
Q-Dayがいつ到来するかに関する推定は、量子ハードウェアとアルゴリズムの進歩によって数年から数十年の範囲で異なっている。
米国国立標準技術研究所(NIST)とマッキンゼーは2030年にQ-Dayが発生すると推定しているが、Googleとデロイトは2035年頃にQ-Dayが発生すると予想している。
危険なのは未来のことだけではない。Q-Day到来後は、現在の暗号化方式で今日転送されたデータですら既に脆弱になっている可能性があるのだ。なぜならQ-Day以降は敵対勢力が「今盗んで、後で解読する」ことができるからである。
その結果、数十年分の機密情報や私的通信、金融記録または医療記録が漏洩してしまう可能性がある。
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打つ手は?
巨大な量子コンピューターはまだ存在していないが、進歩のスピードは加速しているため、専門家は「ポスト量子」暗号方式による即時の準備を促している。
政府や産業界は、ポスト量子暗号(PQC)として知られる量子耐性アルゴリズムの開発を準備競争の真っ只中にある。
例えばNISTは、量子攻撃に耐えられるよう設計された新しい暗号化方式の標準化を進めている。
しかし、新システムへの移行は非常に大きな課題である。世界中のすべてのコンピューター、セキュリティプロトコル、ネットワークデバイスを更新する必要があるため、その過程には数年かかる可能性が高い。
Q-Dayが迫る中、真の課題は信頼されている暗号方式が時代遅れになってしまう前に、組織や政府が重要な情報を保護するための決断的な行動を取ることができるかどうかである。
量子耐性ソリューションへの投資と世界的な行動促進によって今準備をすることが、量子時代によって引き起こされる根本的な変化に対して社会がどの程度回復力を維持できるかを決定することになる。
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