パナソニックは国立競技場などで使用される業務用大型プロジェクターを売却し、デジタル事業に集中する姿勢を固めた。主力事業である電気自動車用のバッテリーは中国での競争激化に直面している。プロジェクター事業の売却額は800億円となり、得られた資金をデジタル企業の売却に振り分け、新たな収益基盤の構築を目指す。
パナソニックが保有するプロジェクター事業は世界市場でトップのシェアを誇っている。2021年の東京五輪でも使用されている。業界用プロジェクターとカメラで構成される「メディアエンターテイメント事業部」の売上高は約1100億円だ。
事業買収に手を挙げているのは、オリックスと外資系ファンドだ。業務用プロジェクターはスタジアムでのプロジェクションマッピングや屋内施設でのCG体験などの用途で使用されている。新型コロナウイルスの収束に伴い、対面でのイベント開催が増えたことを受け、安定的な収益を見込むことができる。
パナソニックはEV用電池と供給網管理システム、欧州を中心に展開している省エネ機器の「ヒートポンプ暖房」の3分野に重点投資を行う戦略を掲げている。供給網管理すすテムはコロナ禍における半導体不足で経済が混乱したことを教訓とし、企業からの引き合いが増えている。
パナソニックは過去の販売データを基に顧客に最適な生産計画を提案したり、在庫を適正化する計画を示したりするサービスを手がけている。21年位米大手を時価総額8000億円越えで買収し、本格的な参入を果たした。プロジェクター事業の売却で得る資金は、企業間の調達サービスをつなぐ機能に強みを持つ別の米国企業の買収に充てるつもりだ。
電気自動車に使用されるEVバッテリーは、電気自動車の市場の先行き不透明感を引き合いに、米国補助金政策や中国と韓国のバッテリー生産大手との競争激化などの影響を受けている。パナソニックは重点投資領域ではない事業の見直しを進め、成長資金獲得を急いでいる。