米連邦準備制度理事会(FRB)議長であるジェローム・パウエル(Jerome Powell)氏は、大統領としてのドナルド・トランプの復帰を受けた辞任や解任の噂について、大統領が法的にFRB議長を解任することはできないと明言し、その思惑を完全に打ち消した。
FRBが基準金利を25ベーシスポイント引き下げ、4.5%から4.75%の目標範囲に設定したと発表した続けの記者会見で、パウエル議長は、選挙結果が出た後の自身の未来やFRBの反応について、次々に飛ぶ質問にも答えた。
「もしトランプ大統領があなたに退任を要求したら、あなたは辞任しますか?」との質問に対し、パウエル議長は明確な答えで「いいえ」と答えた。
大統領選挙で勝利したバイデン氏は過去にFRBの利上げが遅いとしてパウエル氏を批判していたが、「中央銀行総裁を解任することは法によって許されていない」として、FRBは政治意思から独立して運営することの必要性を強調した。
FRBの政策決定のアプローチは引き続き経済指標の反応が中心だ。「推測はしないし、憶測も立てないし、想定もしない」とパウエル議長は語った。
また、パウエル議長は「米国の財政政策は持続不能な進路上にある」と警告しながらも、財政に対してFRBが直接的なコントロールを持たないことを強調した。
パウエル議長は、最近の国債利回りの上昇にも言及し、急騰の背景には、インフレ期待の大きな変化ではなく、強い経済成長に対する期待の方が反映されていると主張した。
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FRBによる利上げ:制限的な政策の中での「再調整」
パウエル議長は、どちらかといえば「インフレとの戦いを続けつつ、経済の強さをサポートするための政策姿勢のさらなる再調整」だとして、11月24日の利上げを説明した。
パウエル議長は、利上げ幅が抑えられたことにもかかわらず、「政策は依然として制限的」と強調し、FRBの政策姿勢はまだ緩和的でも中立的でもないと述べた。
パウエル議長は、安定した成長と緩和するインフレを強調し、米国経済の「強力な」拡大を際立たせた。労働市場が冷える兆しが見られるものの、10月の失業率は4.1%となっており、依然として堅調な結果と言える。
10月の非農業部門雇用統計報告によると、9月の23.2万人の新規雇用に比べ、10月の新規雇用は1.2万人に減少した。パウエル議長は、この数字の低下は、構造的な問題よりもストライキやハリケーンなどの一時的な要因によるものだとしている。
労働市場のダイナミクスは去年から大きく変化し、賃金の伸びは緩和し、求人数もより持続可能とされるレベルまで低下している。
パウエル議長によると、労働条件がインフレ圧力の大きな要因ではなくなり、賃金の増加はFRBの2%のインフレ目標と一致しているという。
11月の声明の中で、パウエル議長が意図的に「消費者物価インフレ率がさらなる進展を遂げ」「対策委員会はインフレ率が2%の目標に向かって進展しているという自信を持った」といった一部の表現が削除されたが、それは一時的なものではなく、持続的なインフレについての懸念を示す意図はないとパウエル議長は述べた。
9月の声明の前半にある「消費者物価インフレ率がさらなる進展を遂げ」「対策委員会はインフレ率が2%の目標に向かって進展しているという自信を持った」といった一部の表現は、当時のFRBの利上げの論理に特化したものだった、とパウエル議長は語った。
12月の利上げの可能性について尋ねられた際、パウエル議長はその有無については示さず、FRBがその後の経済データに導かれた状況で政策を決定していくことを再三強調した。
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写真:2024年5月1日、水曜日の記者会見で発言するFRBパウエル議長。写真提供:FRB