中国は今、過去最大級の経済カードを切ろうとしているかもしれない。
今週ロイターが引用した情報筋によれば、中国の政策立案者は2025年に米国から中国製品に課される関税が60%に達する可能性があるとして、人民元を大幅に安くすることを検討しているという。
この動きは中国が抱える経済的圧力が増大する中、北京の通貨戦略における大きな転換を意味するだろう。
だが、この戦略は本当に機能するのだろうか?
安い人民元:利点と欠点
米国のすべての輸入品に10%、中国製品には60%の関税を提案した次期大統領ドナルド・トランプが、北京がバッファーとしての通貨切り下げを検討するに至らしめた。理論的には、人民元が弱くなれば中国の輸出品が安くなり、米国の関税の痛手を相殺できるはずだ。
が、事態は一筋縄ではいかない。
INGのアナリスト、リン・ソン氏によれば、中国人民銀行は人民元を「強く守る」と予想されている。中国中央銀行は、人民元が急激に下落すると米国からより厳しい対抗処置を引き起こしかねないことを強く認識している。
この噂に対して、中国人民銀行傘下の情報誌『金融ニュース』は、人民元は何ら安定した立場にあり、年内に通貨は安定化し、強化されると予測し、さらに中国政府がこれに反論した。
中国の本当の問題:バランスシートの不況
関税が中国の唯一の問題ではない。
中国には複数の面からの経済的な戦いがある。崩壊する住宅市場、弱まる株式市場、そして消費活動の減速がある。
パリヌーロ・キャピタルの最高投資責任者で、The Macro Compassの創設者でもある、アルフォンソ・ペッカティエロ氏は、「政策立案者たちが考えていた住宅市場の緩やかな資産の資金削減は悪循環を招いてしまい、これがバランスシートの不況を引き起こした」と語った。
「2021年以降、不動産に関連した莫大な資産が吹き飛んだ」ともペッカティエロ氏は述べた。
バランスシートの不況は何よりも厳しい。このシナリオにおいて、消費者や企業は消費や投資よりも資産を修復することを優先し、典型的な金融政策ツールである利上げや通貨切り下げのような政策が実質的に無効になる傾向がある。
このような経済の減速は、2011年から2012年にかけてのユーロ圏の債務危機を彷彿とさせる。当時の財政引き締め策は、実質の経済成長を刺激する上で利用された、一般的な金融政策の多くを無効にした。
中国政府の具体的な対応
現時点で中国の政策対応は、控えめなところを見ると、勇気が足りないだろう。
当局は小規模の財政刺激策を考案しているものの、これらの取り組みはその規模や範囲が不十分である。
政府はまた、中国株を空売りから持ち直すための仕組みを設け、市場の安定化を目指そうとしている。さらに中央銀行は流動性を高めるために利上げを攻める方針を取っている。
しかし、これらの介入にも関わらず、中国経済はまだ本質的な躍進を遂げておらず、アナリストや投資家は北京の戦略について懐疑的な態度を崩していない。
中国株式の動きを示す重要な指標である『iシェアーズ MSCI 中国ETF』(NYSE:MCHI)は、2021年2月に記録的な高値を記録した後の水準からほぼ50%低くなっている。
なぜ安い人民元がこの問題を解決しないのか
人民元の切り下げが魔法の銃弾のように聞こえるかもしれないが、経済学者たちはこの戦略の効果を疑っている。
ペッカティエロ氏によれば、「バランスシート不況の場合、利上げを切ることや通貨を切り下げることで消費者や企業の支出を増やすことはできない」という。
「彼らは血を流しているのであり、不動産市場の持続的な弱さによって純資産が減少しているのを見ているのである」とペッカティエロ氏は述べた。
言い換えれば、安い通貨は中国の家計や企業の間で砕け散った資産を再建することはできないだろう。
本当の解決策は何か
中国にとっての解決策は、ペッカティエロ氏によれば、大規模で、特定の財政刺激策を導入することかもしれない。
政府が一部の企業や消費者に対して多額の支出を行うことを検討する一方で、一部の専門家は、中国が緊急時には広範囲かつ具体的な財政刺激策を導入することを考えている。
しかし疑問は残る。北京は財政刺激策に向けて具体的な大規模な措置を取ることができるのだろうか。
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