米国の景気指標である12月の購買担当者景気指数(PMI)が予想を上回ったことは、米国のサービス部門における回復力を強調しているが、物価圧力の上昇と迫り来る関税による懸念が、楽観的な経済状況に影を落としている。
米国経済調査所(ISM)が発表した報告書によると、米国製造業連盟は2024年12月のサービスPMIが54.1%に上昇し、経済学者の予想である53.3%を上回り、11月の52.1%から堅調な2ポイントの上昇を記録した。
このデータは、サービス部門の持続的な拡大を裏付けており、これで6ヶ月連続の拡大となり、12月の指数は今年3番目に高いレベルを示している。
今年のこの時間には米国製造業連盟の「サービス業務調査委員会」の委員長スティーブ・ミラー氏は、「9つの産業が12月に成長を報告し、先月の合計より5つ少ない」と語り、「サービスPMIは2023年1月から過去24ヶ月のうち22ヶ月で拡大している」と述べた。
米国サービス部門の成長を後押しした要因
サービスPMIの上昇は、取引活動とサプライヤーの配達によって主に牽引された。ISMのビジネス活動指数は11月の53.7から12月の58.2に上昇し、年末の活動が活発化していることを示している。
新規受注も上昇し、対応する指数は53.7から54.2に上昇した。
しかし雇用の成長はフラットで、雇用指数は51.4のままだった。これはサービス業全体で控えめな雇用が続いていることを示している。
物価圧力が再開、関税の懸念が大きくなる
楽観的な一方で、物価指数の急上昇がサービス部門内のインフレ圧力について懸念を引き起こしている。
この指数は11月の58.2から12月の64.4に急上昇し、57.5というコンセンサス予想を大幅に上回った。パネルメンバーは、原材料コストのインフレ、労働の制約、関税に関連する不確実性が価格上昇の主要な要因として挙げている。
ISMの最新調査で最も際立ったテーマの1つは、2025年に向けたビジネスの主要リスクとして関税に対する懸念が浮上していることだ。
具体的なことは不確かではあるが、米国政権(トランプ政権)は数週間以内に新たな関税を課すことが決まっているため、企業は可能性のある貿易政策の変更に備えている。
ミラー氏は「関税に対する懸念が、パネルメンバーのコメントの中で一番多く挙がっている」と強調し、これにより企業は、サプライチェーンの混乱やコストの上昇が起こる可能性に備えていると述べた。
労働市場のデータは引き続き強い
米国労働統計局は火曜日に、11月の「職務経歴調査」(JOLTS)データを発表した。
求人数は259,000件増の810万件となり、市場予想の770万件を上回った。専門・事業サービス業での欠員は273,000件増の、金融・保険業での欠員は105,000件増、民間の学校教育サービスでの欠員は38,000件増になった。
辞職件数は307万人となり、2020年8月以来の最低値となった。これからの数ヶ月間でビジネスは積極的に採用を行う一方で、労働者の感情は経済の不確実性の中で慎重を保っているということを示唆している。
市場の反応:ドルの急上昇と国債利回りの急騰
金融市場は、この混合された経済データに迅速に反応した。
米国の通貨ペア指数(DXY)は火曜日の取引を前に、0.3%上昇しており、一部は月曜日の損失を一部取り戻している。
債券市場では長期国債の利回りが大きく動き、6~7ベーシスポイント上昇している。30年物国債の利回りは4.90%となり、2023年11月上旬以来の最高水準に達し、iShares 20+ Year Treasury Bond ETF(NASDAQ:TLT)は1%下がった。
国債の利回りの急上昇が、株式市場での懸念を煽った。CBOEのボラティリティ指数(VIX)は7%上昇し、インフレと債券の利回りの上昇に対する投資家の不安が高まっていることを示している。
主要な指数はすべてマイナス圏に下落し、S&P 500指数は0.4%下落、テクノロジー銘柄重視のナスダック100指数は1%下落している。
個別の大型株の内訳を見ると、Nvidia Corp。 (NASDAQ:NVDA) は3%以上下がった一方、Tesla Inc. (NASDAQ:TSLA) は米国銀行による「ニュートラル(中立)」の格付けダウングレードにより4%近く下落した。