人工知能(AI)ブームがアメリカの老朽化したエネルギーインフラと衝突しつつあるが、その際に天然ガスがAI革命を文字通り「過熱」から守る意外な切り札となる可能性がある。
OpenAIのCEOであるサム・アルトマン(Sam Altman)氏は、先週木曜日、ソーシャルメディアで率直な警告を発した。「我々のGPUが溶けてしまっている」と彼は投稿している。このコメントは、チャットGPTでの画像生成需要の急増の中、OpenAIが一時的な使用制限を課すことを理由として投稿されたものだ。
チャットGPTのようなツールがビジネス運営に不可欠な存在になると、それを動かすデータセンターは前代未聞の速さで電気を引き込むようになる。現在、信頼性のある電力供給を確保するために、競争が始まっている。
AIの使用によってアメリカの電気需要が急増、このギャップを埋めるために天然ガスが登場する可能性は?
AIの爆発的な普及によって、データセンターがアメリカの電力網の主要なエネルギー消費者になるという、天然ガスインテリジェンス(Natural Gas Intelligence)による今週の報告書「AI Rising: How Will Natural Gas Markets Evolve to Fuel the Demand Surge?」と題された報告書によれば、アメリカの電力網に前代未聞の圧力がかかることになる。
国際エネルギー機関(IEA)によると、アメリカの2027年までの電力需要は、現行のカリフォルニア州の全電力使用量に相当する規模で増加すると予測されている。つまり、たった3年間でおよそ4,000テラワット時(TWh)に相当する急増が起きるということだ。
ウッド・マッケンジーによると、2035年までにデータセンターだけで年間395~660 TWhが消費される見込みで、合わせてアメリカの電力総消費量は、2024年の4,000 TWhから2050年には6,000 TWhにまで急増すると予測されている。
AIの急速な展開のペースでは、再生可能エネルギーや長期的なインフラのアップグレードが遅いこともあり、天然ガスの出番となる可能性がある。
「これらの施設にとって必要不可欠な信頼性を持つ天然ガスは、新たなAI駆動型電力需要の一部を確実に獲得するだろう」と、天然ガスインテリジェンスの戦略・調査担当シニアバイスプレジデントであるパトリック・ラウ(Patrick Rau)氏は報告書の中で語っている。
天然ガスはしっかりとした柔軟な電力を供給することができるため、データセンターにとってはこの上ない利点である。ラウ氏は、新しいガス火力設備がどのくらい速く作動するかということが重要なポイントであるとしている。
公共サービス企業と石油大手が新たなAI駆動型電力需要に参入
電力生産業者はすでに新たな需要に対応するために急ピッチで動いている。NRGエナジー(NYSE:NRG)は、テキサス州で15億キロワット(GW)の天然ガス火力発電プロジェクトを短期間で急ピッチで進めている。同社CEOのラリー・コーベン(Larry Coben)氏は、同社がデータセンター開発者と複数の意向書を締結し、合計約8GWの発電容量を持つ天然ガス火力発電所についても進展があると語っている。
2月には、NRGはAIデータセンターに明確に関連する新たな容量として540万キロワット(GW)の増加を開発するために、GE ヴェルノヴァ(NYSE:GEV)と建設会社キーウィット社(Kiewit Corp. )と提携した。
他の公共サービス企業も続いている。 アメリカン・エレクトリック・パワー社(NASDAQ:AEP)は、AI、製造業の生産リショアリング、および総合的な経済開発によって推進される「希望的観測に基づく電力需要」に対応するために、合計100億ドルの投資を検討している。同社は既に、同社の11州のエリア全体で2030年までにお客様からの追加の20GWの電力需要を取り付けている。
石油大手のシェブロン(NYSE:CVX)も、新たなAI駆動型電力需要のために意外な形で参入を果たしている。同社は、投資家エンジンナンバーワンとGE Vernovaと提携し、中西部、南東部、西部全域にわたってAIデータセンターをサポートするための共同発電所の建設を計画している。
ディープシークはAIデータセンターの需要を削減できるのか?
中国のAI企業ディープシーク(DeepSeek)は、その新しいプラットフォームの性能が現行のモデルに匹敵すると主張している。しかもその際の消費電力は現行のシステムのわずか1/4で済むという。この革新は有望なものの、AIの電力消費についてはまた別の問題が発生する可能性もある。
リスタッド・エナジー(Rystad Energy)社の専門家による最近の報告書によれば、ディープシークの改善された計算効率は、ハイパースケーラーの電力需要を抑制するための手段となるかもしれない。
しかし、新しいAI駆動型データセンターの需要を抑制する一方で、より多くの電力を消費するような方向にも転じる可能性があるだろう。
現時点では、電力会社からのメッセージは明確だ。つまり、パイプラインを順調に動かし、タービンをフルスロットルで稼働させておくことだ。
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