消費者物価の予想外の急増を受け、投資家が連邦準備制度(FRB)の利下げに対する期待を再調整している。
このためFRB先物市場のレート予測は、年末までの利下げがわずか36ベーシスポイントであるとの見方が強まっている。これは、FRBファンド先行き予測ツールCME FedWatchによると、2回の利下げが50%の確率で実施されるというものだ。
12月に示された2回の利下げという見方に対し、市場は今や1回の利下げが最も可能性が高いと見ている。
CFTCの規制を受けるカルシ社が追跡した賭けのオッズによると、2回の利下げが25%の確率で実施されると予測されている。1回の利下げが実施される可能性は22%、利下げがない確率は17%。
インフレ懸念再び
ミシガン大学の最新の消費者センチメント(感情)調査は、アナリストを驚かせる形でインフレ期待の急激な上昇を示し、新たな警報を発している。
1年間のインフレ期待は4.3%に急増し、先月から1ポイント上昇して2023年11月以来の最高水準に達した。
「多くの消費者が、次の1年以内に高いインフレが戻ってくるのではないかと懸念しているようだ」とミシガン大学は報告書の中で述べている。
大統領ドナルド・トランプは、アルミニウムや鉄鋼の輸入品に25%の関税を課すとともに、主要な米国の貿易パートナーに対しても関税を引き上げると公約した。
市場ベースの予想インフレを示す重要な指標である米国の5年間債券利回りと国債利回りの差は、月曜日に2.59%に上昇した。TradingViewのデータによると、これは2024年9月の1.89%からの上昇である。
これは、投資家が今後5年間にわたりインフレ率がFRBの2%の目標を大幅に上回ると予測していることを示唆している。
「グローバルな貿易保護主義が復活し、G7諸国の間で重商主義が復活したことにより、政策の不確実性が大きくなったことを鑑みると、インフレ期待がしっかりと固定されているとは断言できない」とは、RSM US LLPのエコノミストであるJosephBrusuelas氏の言葉。
「インフレ期待の急増は偶然ではない。トランプ大統領のカナダ、メキシコ、中国、EUに対する関税脅威は、インフレに対する懸念を煽っている。株が過去1カ月間ほぼ史上最高の水準で推移しているにもかかわらず、金価格は上昇しており、さらに最近の1カ月間でTIPS(米国財務省標準ポリシーポートフォリオ)は米国債を上回っている。これはインフレにポジションを取っている投資家の明らかな兆候だ」とは、アナリストのMichael Gayed, CFA氏。
非農業部門の1月の雇用は143,000人増となり、悪天候による被害もあってコンセンサスを僅かに下回ったが、前月の予測を上回る100,000人の雇用が追加された。失業率は意外ながら4.1%に低下し、賃金の伸びも加速した。
「労働市場は完全雇用の周辺で安定しているように見え、FRBの利下げサイクルが終了したという私たちの見解を補強している」とは、米国銀行のエコノミストAditya Bhave氏。
ゴールドマン・サックスのエコノミストたちも同様の見解を示している。市場は引き続き関税のインフレリスクの影響を過小評価しており、投資家はレート予測の中で持続的な物価上昇圧力を十分に踏まえていない可能性がある。
「先週金曜日の雇用統計報告は、FRBが基礎的なインフレ抑制の要因についてより良い自信を持つまで、我々はFRBが(貿易及び財政)政策結果へのより良い明確な視界を持つまで、我々はFRBが慎重であることができるという議論を補強した」とゴールドマン・サックスのエコノミストたちは述べている。
物価上昇リスクヘッジは、ここ1カ月間で強い収益を上げている。 iShares TIPS Bond ETF(NYSE: TIP)は約3%上昇し、 SPDR Gold Trust(NYSE: GLD)は9%急伸した。
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