米国時間の本日、ウエスト・テキサス・インターミディエイト(WTI)原油先物は、2024年7月中旬以来、初めて1バレル80ドルを上回る約4%の上昇を見せました。
この急騰は、世界の供給混乱に対する懸念が高まる状況の中で起きたもので、15か月に及ぶ壊滅的な戦争の末にガザ地区で停戦が発表されたこと が背景にあります。
WTI原油価格は、 米国石油基金 (NYSE:USO)によって追跡されており、2024年10月初旬以来、1日の急騰がこの規模で起こったのは初めてのことになります。
原油価格急騰の背景
イスラエルとハマスの間に停戦が成立したという中東における好ましい地政学的情勢にもかかわらず、トレーダーは供給の基礎的な部分の締め付けに焦点を当てたままです。
ロイターによると、米国、エジプト、カタールの外交官が仲裁した停戦協定は、イスラエル軍がガザから撤退し、囚人との引き換えを行うというものです。
これで中東情勢が緩和の方向に動く重大な一歩が踏み出されたことになりますが、原油市場は今後の短期間において世界の原油流動性を制約する一連の要因によりより懸念を抱いているようです。
エネルギー情報庁(EIA)が水曜日に発表したデータによると、1月10日までの1週間で、米国の原油在庫が市場予想を上回る勢いで減少したというわけです。これによって原油市場の上昇ムードが一層燃え上がりました。
昨週のデータによると、米国の原油在庫は196.1万バレル減少し、市場予想の160万バレル減少を上回りました。
これで米国の商業用原油在庫は、戦略石油準備所を除くと2022年4月以来の最低レベルに低下しました。
ロシアとイランに対する米制裁の影響
1月10日、バイデン政権はロシアに対して新たな制裁を発表しました。これはロシアの2大主要プロデューサーであるガスプロム・ネフチ(Gazprom Neft)とスルグトネフテガス(Surgutneftegaz)に制限を加えるもので、また、この他にもこの国からの原油を積載する160隻以上のタンカーに制裁を課したのです。
これによって、これらの国々にとってさらなる物流の混乱が引き起こされることになります。
水曜日に発表された国際エネルギー機関(IEA)の最新の石油市場レポートでは、これらの制裁がもたらす潜在的な影響が強調されており、次のように述べられています。
“北半球の多くの地域で氷点下の気温が続く中、1月上旬に米国のイランとロシアに対する制裁が強化されたことで、基準となる原油価格が急騰しました。”とのこと。
現在のところ、トランプ次期大統領のもとで米国政権がイランに対して厳しい姿勢をとるかどうかはわかりませんが、これによって供給制約が悪化する可能性が高まっています。
“これらの新たな措置がもたらす潜在的な影響を完全に定量化するにはまだ早いとはいえ、一部のオペレーターはすでにイランとロシアからの原油について撤退し始めたとの報告があります。”IEAはこう言及しています。
北半球の主要な石油消費地域で氷点下の気温が続いていることで、エネルギー市場がさらに締め付けられ、暖房燃料への需要が高まっています。この季節的な需要の急増は、在庫の減少と制裁によって引き起こされる混乱とが重なり合って、原油市場が追加の供給ショックに対して脆弱であることを物語っています。
IEAは、”気象、制裁、あるいはその他の出来事による供給の減少が実質的なものになった場合、近い将来において原油在庫は迅速に引かれることになるでしょう。”と述べています。
今週初めに、ゴールドマン・サックスの商品アナリストである Daan Struyven 氏は、ロシアとイランの原油供給における組み合わさった制約のシナリオにおいて、原油価格が1バレル90ドルまで急上昇する可能性があると警告しました。
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写真:シャッターストック